拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。


「そうだな……しかしなぜ殿下が立会をしたのだろうか? なぜ婚約破棄を後押しするような真似をしたのだろうか……?」

 お父様のおっしゃる通りですのよ。いくらコリンズ子息の友人だとしても普通は王子が干渉する事ではありませんわよねぇ?

「殿下はコリンズ子息のご友人ですから、きっと子息を苦しめるな。とか苦言を呈しそうではありませんか? やはりここはお断りをした方が良さそうですわね」


 実は最近学園に賊が侵入し、学園に飾ってある絵が数枚盗まれたそうで学園内の強化の為、十日間休みになっています。盗まれた絵はレプリカだったそうで、本物はきちんと仕舞ってあるのだそうです。この絵は学園を卒業し画家になった方が寄贈した物と学生時代に描かれた絵だったそうですわ。

 レプリカの為未遂に終わりましたが、先生達は生徒が襲われなくて良かった。と安堵されていましたわ。今後のことを考えての防犯強化なのですって。

 今回の事で寄付を集める事になり我が家も寄付をしたそうで、お礼の手紙が届いていました。寄付金額の合計とそれに対してどのように使用したかの報告書が後でまた届くのだそうです。学園は国が管理していますので、横領など出来ないよ。とお父様が言いました。何故ですの? と聞くと横領がバレたら即絞首台行きだ。国王は許さないさ。とおっしゃいました。

 校長の采配が優れていて、国王に忠誠を誓っている王弟殿下が校長をされているので私腹を肥やすことは無いのだそうです。歴代の校長は王族から選出される事が多く、現校長は歴代の中で一番生徒の理解者であろうと努めている方で、生徒からも親からももちろん陛下からも信頼されています。

 今回の婚約破棄の件で疲れてしまった私は学園が始まるまでは、屋敷でのんびり過ごそう。そう思っていました。

 
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