拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

『レイ様、お久しぶりの方もいらっしゃるのでしょう? よろしいのですか?』

『あぁ、問題ない。久しぶりなのは私が華やかな場に参加してなかったからだ。リュシエンヌがいるからこれからはなるべく参加する様にする。だから問題ない』

 これからリュシエンヌと共に社交界に出るのも悪くない。今まではサボっていたからな。そういえばリュシエンヌは酒を飲んだんだよな……これからは気をつけないといけないな。


『リュシエンヌ、酔いは覚めたか?』

『なんのことですの?』

 首を傾げるリュシエンヌ。そんな仕草も愛らしい。


『酔っているから、その、あんな事を言ったのかと、思ってだな』

『わたくし何か変なことをいいましたか? レイ様が気に障るような、』
『違う、そうでなくだな、大好きだとか、』

 照れ臭くて口籠もってしまった。自分の口からこんな言葉が出てくるとは……


『本心ですわ。レイ様が好きなので酔ったふりをしてどさくさ紛れに伝えたのですわ』

 酔ったふり! どさくさ紛れ! キラーワードだ!



『こういう時ではないと甘えられないと思って……』

『それは、いつでも良い。酔ったふりなどしなくても好きな時にいつでも甘えてくれ。その方が嬉しい』


 リュシエンヌは私の限界を試したいのだろうか! ニヤけてしまうではないか!


 馬車を待つ間ギュッと腕を絡めてくるリュシエンヌ……限界だった。後頭部を見ているだけで愛しくて……


『レイ様?』

『すまない、耐えきれずつい』

 こんなことで喜ぶのか、リュシエンヌは! なんていう顔で私を見てくるのだ……


『大好きです。レイ様!』

 リュシエンヌが胸に飛び込んできた所で馬車が来てしまった! 

 来てくれて良かったのかそうでないのか……来なかったらきっとリュシエンヌに……良いのだろうか?



 
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