拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

「いつも悪いな。これだけ作るのは大変だろう?」

「簡単なものしか出来ませんけれど楽しいですよ。シェフもメイドも手伝ってくれますし、上達して来たと褒められましたわ! それにサンドイッチは具材を切るのに失敗してもパンに挟めば誤魔化せますもの」


 包丁はあまり持たせて貰えませんので、出来たものを挟んでいるだけのようなものです。

「十分だよ。その気持ちが私には勿体ないよ」

 ポンと手を頭に乗せて撫でてくれました。喜んでくれているということ良いのよね? 食事が終わりお茶を飲んでいましたが、午後のお仕事の邪魔にならないようにと帰ろうと思いました。


「そうだ。リュシエンヌに言わなくてはいけない事がある。騎士団本部への異動が決まった」

 本部という事はさらに上の地位になるという事かしら? 不勉強ですわね……

「おめでとうございます。凄い事なのですよね?」

 あまりお仕事のことはお話しされないのですが、報告してくださって嬉しいですわ。



「まぁそうなるな……ただ本部となるとデスクワークが増えるから体がなまりそうだ。暫く忙しくなるがリュシエンヌとの時間は大事にしたい」

 レイ様は体を動かすのが好きだと言っていましたものね。でも書類仕事は正確で早いと(陛下に)お聞きしましたわ。他国の言葉も堪能で聞けば聞くほどレイ様を尊敬しますわ。


「無理しないでくださいませね」

「すまない。何かあったらすぐに相談してくれ」

「えぇ。頼りにしていますわ」

「騎士達と練習するのも次回で終わりだと思う。あとはレオンに任せる」

「必ず見に行きますわね!」


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