拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

 執務室を出て、馬車に乗ろうと向かっていたところでした。レイ様の隊の騎士様達とは顔見知りになって来ていましたので、顔を見ると挨拶をしてくれますし私ももちろん挨拶を返します。

 たまに話しかけられて、皆さんに差し入れをしていたお菓子の話になりますが、応援隊のルールだと言われましたので控えています。

「本当にあのクッキーは美味しかったです!」

 騎士様達に言われました。

「お褒めいただきありがとうございます。お世辞でも嬉しいですわ」

「お世辞などではありません」
 
 この騎士様は人気No.3の……シオン様ね。毎回沢山の差し入れを令嬢達から渡されています。それなのに私のクッキーまで口にするなんて、騎士様はやはり体が資本なのですね。

「良かったら馬車までお送りしますよ!」

 No.3の騎士様はお仕事中ですわよね?


「お仕事中に申し訳ありませんわ。それにすぐそこに私の家のメイドと護衛も待っていますのでご安心くださいませね」

 微笑んで会釈して失礼しました。レイ様の婚約者だから気を遣ってくれているのでしょうね。




 
< 172 / 223 >

この作品をシェア

pagetop