拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

「リュシエンヌとの子が欲しいと切に願った結果だ。手紙を貰って内容を確認しとても嬉しかった」

 私は驚いただけでしたわ。まだ実感も湧きません。でも

「そうですわね。嬉しいですわ」

 そっとお腹に手を当ててみる。ぺたんこのお腹。ここに子がいるなんて。

「リュシエンヌは嬉しくないのか?」

「そうではなくて……まだ実感が湧かないだけですわ。でもここに赤ちゃんがいるのならレイ様と家族になれるという嬉しさはありますわ」

 レイ様の子供は何人でも欲しいですもの。何があっても安心して過ごせますものね。

「当初の予定とは変わってしまったが……元気な子を産んで欲しい。仕事が早く終わった日には必ず会いにくるから」

「約束ですわよ?」




 公爵様はすぐに教会を予約してくださって、結婚式を挙げる事になりました。親族だけのはずが陛下と王妃様もお忍びで参列して、お祝いの言葉を頂きました。




 それから数ヶ月……私は元気な男の子を産みました。レイ様に似てくれれば良かったのに私にそっくりで……


「リュシエンヌに似て良かったな!」

 ニコラと名付けられた私たちの子を高い高いするレイ様は満面の笑みでした。

「私はレイ様に似て欲しかったのですわ」

 ちっちゃいレイ様の姿を見たかった……でも髪の毛の色だけはレイ様の色。


「リュシエンヌに似た方が良いに決まっているだろう! おかしな事を……」

「次はレイ様に似た子を望みますわ!」

「ニコラが可愛くないのか?」

「? 可愛いに決まっていますわ。お腹を痛めた子で、レイ様との愛の結晶ですのよ?」


 変なレイ様ね。ニコラはいつも笑ってくれて可愛いですわ。みんなに可愛がられて愛されて、お父様とお母様は目に入れても痛くない様子ですし、ハリスやパティも弟(ではない)が出来た。と喜んでいますわ。

< 222 / 223 >

この作品をシェア

pagetop