前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す

十三転び目 現世人間のハム子は今日も元気です

 公花たちが屋敷の外に飛び出すと同時に、神殿は倒壊した。
 一気にぺしゃんこになった建築物の跡を見て、基礎の大切さを思い知る。

 従業員たちはすでに避難した後で、怪我人はいないらしい。
 本当によかったねと満面の笑みで剣に同意を求めたのに、チクチクとした視線を向けられたのはなぜなのだろう?

「日暮……!」
「風間くん!」

 あたりはすっかり日が落ちていたが、門の外には風間が待っていた。
 公花の潜入に一役買った後、もしものときは突入も辞さないと、ずっと待っていてくれたらしい。

 お互い無事でよかった。
 けれど誘拐も監禁も、表沙汰にできるようなことではないために、ろくな説明もできぬまま口ごもっていると、剣が前に進み出てきた。
 頭のいい彼のことだから、きっとうまく説明してくれることだろう。

「風間。……手間をかけたな」

「蛇ノ目。……もういいのか?」

「ああ」

 しばらくの間、ふたりは睨みあうように見つめ合って。

「日暮を危険にさらしてんじゃねーよ。次はねぇから」

「わかってる。……次なんてないしな」

 ……。……?
 それで終わり?
 一言も二言も足りないような気がするけれど、それで通じてしまうの?

 男の子って便利だ。
< 129 / 134 >

この作品をシェア

pagetop