前世ハムスターのハム子は藪をつついて蛇を出す

三転び目 蛇ノ目剣は裏で暗躍する

 シロツメ草が咲き乱れる野山を、一匹の白蛇と、一匹のハムスターが駆けまわっている。

『アハハハ……待て待て~』
『ウフフフ……捕まえてごらんなさ~い』(※イメージ映像です)

 耳をすませば、心地よい葉擦れや、せせらぎの音。
 遠くでは、薪を取りにきた人間が、生活に必要な分だけの木を切る音がこだましている。

 神々しい白亜の体、宝石のような金色の瞳。
 そんな自分を、ふもとの村の人間たちは、「白蛇は神の使い」だと言って尊重してくれていた。

 山の祠には供え物が絶えず用意されている。
 長生きをしているらしい自分は、すでに「(あやかし)」の類に足を踏み入れており、山の生き物たちからも一目置かれる存在だった。

 自然に囲まれ、空には鳥が飛び、さまざまな生き物たちが自由に生きる。そんな時代に、生きていた記憶。

 ――実はずっと、忘れていた。そんな「生」があったことを。

 「メモリが抜け落ちている」ことなどどうでもよかったし、そのことに気づいてもいなかったのだが。

 廊下で公花と出会い、目と目が合ったとき、雷が落ちたような衝撃を感じて、思い出がフラッシュバックした。
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