帰り道

帰り道

「お疲れ様でーす。」

そう挨拶し、職場を後にする。
職場から出る時は、今日のメンバー3人一緒だ。

大好きな先輩…今日も車だよな…少し待ってたいなと思いつつ、でも待つのもちょっといやらしいし、ゆっくりと歩く。

もう1人の先輩が待っていることに気がついたのか、
私の大好きな人に何か言われたのかは分からないが、早く帰れと言わんばかりに「お疲れ様です。」を連呼してくる。

そう言われちゃ、待てないし、帰るしかない。

まぁどうせ、大好きな先輩も車だし、仕方ないか、

そう少し諦めた気持ちを持ちながら、足早に歩き出す。


外は、日が落ち、薄暗い…

人気のないまっすぐの一本道を通りつつ、なんとなくチラッと後ろ振り返る。

誰も居ないか…


私の仕事はいつも、3人しかない。

日替わりだけど、人数は変わらない。

人手不足の業界だから仕方ない。


そして、今日は私の大好きな先輩と一緒だった。

そんな大好きな先輩の名前は春田さん。

春田さんは、とにかく凄く優しい。
そして、仕事も完璧。でもそれを鼻にかける事も強要することもなく、色々教えてくれるし、手伝ってくれる人。

そして清潔感がある。

物静かだけど、コミュ力は高く、なんていうかお母さんみたいな安心感がある。

私はその安心感に惹かれた。

そして何回も助けられた。


今日も色々助けてもらったなぁ…


そう思いながら歩いてると、

いつの間にか駅のホームに着く。


このホームはゆるやかな左カーブ。

曲がっているのに何故か先の方まで見通せる不思議なホーム。

いつもは人でごった返しているのに、今日は、人の気配は全くなく、シーンとしている。

疲れている私には丁度いい。


ホームには等間隔でベンチがある。

疲れきった私はいつもベンチに座る。

どこに座ろうかな…と思いつつ、疲れがMAXだった為、
すぐ近くのホームのベンチに腰掛ける。

春田さんは、いつも車だから、ここに座っても遭遇することもないし、問題ないだろう。

なぜ、遭遇したくないかって?

そりゃ、遭遇したら嬉しいけど、私自身緊張するし、きっと春田さんだって私と一緒に帰りたくないだろうし…変に気を遣わせたくないから…


そう心で思ってて悲しくなる。

被害妄想なのかな…でも、嫌われてる気はする。


そう…少し悲しい気分になりながらもベンチに座り、仕事の資料に目を通す。

しばらくすると、タッタッタッっと、聞き覚えのある足音が聞こえてくる。

まぁ絶対、春田さんじゃないな、そう思い、
足音の方にそっと、バレないように目をやり、私は目を見開いて驚く。

なぜなら、春田さんだったからだ。

なんでいるの?え?駐車場の方向かってた気がするんだけど…

頭の中の自分が凄くうるさい。

しかし、春田さんは気がついてないのか、気がついてて敢えてスルーしてるのか、春田さんはスマホから目を逸らすことなく、目の前を足早に通り過ぎていく…

声掛けた方が良かったかな?

いや、でも一緒に帰りたくないのならかけない方がいいのかな…そう思いつつ、

結局、遠慮して声をかけられない意気地無しの私。

まぁ、今自分汗やばいし、気が付かれなくて良かった。

汗の匂い、臭いって思われたら嫌だし…

そうポジティブに思い、やり過ごすしかなかった…

でも、電車なら、職場から一緒に帰りたかったなぁ〜。滅多に春田さんとは帰れないから…

と心の中で密かに後悔する私であった。

もう1人の先輩に急かされたとしても、

もう少し待てば良かった…

また、いつもの車だろうと自己判断せずに
待てば良かった。

そんな後悔ばかりが襲う…


この好きってやっぱり恋なのかな??

私には分からない。

恋愛感情の好きか、憧れの好きかは未だに分からない。


私の悩みの種である。


昔からの悩みの種。

勿論、好きな相手は学校や職場が変わる度に変わるけどね。


今は春田さんが大好き。

そして、憧れてる人…。


そんな春田さんの正体は、

優しくて、真面目で、物静かな雰囲気を纏っている、
親くらい歳の離れた子持ちの女性である。



終わり
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