没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
1.没落寸前の貧乏伯爵令嬢
「あー。とうとうこれを売るしかないわ。」

午前中からずっと帳簿とにらめっこしているが、もうどうしようもないことは明白だった。

若干18歳にしてロジャーズ伯爵家の長女として家計を切り盛りするフィリシティ・アリア・ロジャーズは「ふぅー」っとため息をついた。

昨日現実逃避をしてマーシの丘に上り、思いもかけず楽しい時間を過ごしはしたが、1日経っても現実が変わるわけではない。

うまい話に乗ってだまされるのはもう2度目になるのだから、いい加減目を覚ましてほしいものだが、まったく変わる気配のない父親にうんざりしながらもそれでも10歳になる弟の教育資金を削るわけにはいかないとなると、これを売るしかないのだと、手の上で燦々と輝く大きなルビーの宝石を見つめた。
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