没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
母から腐っていると聞かされていたので、どんな頑固じじいが出てくるのかと思ったが、まったく違っていて、おだやかな品の良い老人だった。髪は全部白くなっており、母や自分と同じ栗色の瞳をしている。

「フィリシティ・ロジャーズか?」

最近調子がいいのだと言って、車椅子でバルコニーにでていた老侯爵と初お目見えしたフィリシティは綺麗なカーテシーで挨拶した。貴族令嬢としての礼儀は母に完璧にしこまれた。これに関しては恥じる事はないはずだ。

「お初にお目にかかります。マリーナ・ロジャーズが娘、フィリシティにございます。今までご挨拶にもうかがわなかったこと、おゆるしくださいませ」

老侯爵はゆっくりと頭を動かし、フィリシティを眺めた。
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