没落寸前の伯爵令嬢ですが王太子を助けてから雲行きがあやしくなってきました
5.夜会
フィリシティは美しかった。

どこの令嬢なのかと夜会で噂好きの貴族たちが扇の下でコソコソとひそひそ話にいそしんでいることなど、当の本人は気づいていない。

自分が平凡な容姿だと思い込んでいるのは本人だけで、栗色の髪はツヤツヤで流れるように美しく、同じく栗色の瞳も奥深くに輝きのある琥珀色で、さらに透き通るような白い肌は抜けるようにとてもきめ細やかだ。普段田舎でお金もなく磨くことをしていない状態でこの美しさなのだから、実際磨けばどんなに美しくなるのかと思っていたが、2日前から専門の美容部員を呼び磨き上げた結果、天女かと見まごうほど美しい美女が誕生しトンプソン伯爵夫人は非常に満足極まりなかった。

息子のダニエルにエスコートさせようかとも思ったが、婚約者がおりさすがに無理だしどうしようかと思っていたところ、エドワーズ伯爵家の息子からエスコートしたい旨申し入れがあり、今王都の令嬢たちの人気を一身に集めるあのエドワーズ卿がエスコートするとなれば誰もが大注目だろうと、事実上のフィリシティのデビューをとても喜んでいるところだったのだ。

一足先にエドワーズ卿とともに屋敷を出た姪を追うように自分も夫とともに出、今、夜会でフィリシティを見て大満足に目を細めた。
エメラルド色のドレスがよく似合っている。
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