ハイドアンドシーク


その日、別の団地の子と敷地内でかくれんぼをしていたわたしは、隠れた先の小さな物置にうっかり閉じ込められてしまった。


中にいると気付かれないまま鍵をかけられたのか、たまたま開かなくなったのか。



あの日のことで覚えているのは、かくれんぼに参加していなかったはずの東雲さんがわたしを見つけ出してくれたこと。


急に暗がりから解放されたことにパニックになったわたしが、暴れてしまったこと。

振り回した手だか足だかが東雲さんの額に思いきりぶつかって、血が止まらなかったこと。


それなのに彼は自身の怪我を顧みず、わたしをおぶって、家まで送り届けてくれたこと。



人生にトラウマとはつきもので、子供時代の出来事はとくに記憶に残りやすい。


わたしは真っ暗闇が少しだけ苦手になっていた。




それだけじゃない。


あれ以来、東雲さんの額にはうっすらと傷が残り、わたしたちはどこか気まずいまま次第に距離ができて。



そしていつの間にか、団地から。

わたしの世界から、


────東雲さんはいなくなっていた。


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