通学路
 三年になるとテストと受験勉強に追われた。そして秋祭りのパレードを最後に部活も引退の時期を迎えた。
 敬斗は夏休みの試合を最後に引退となったが、体が鈍るからと放課後の練習には参加していた。その間、琴梨は教室に残って勉強に励んでいた。そして敬斗の練習が終わると一緒に下校する。
 あれからも懲りずに、登下校はずっと自転車だ。
 琴梨の息抜きは、登下校の片道十分のこの時間だった。
 敬斗の大きな背中にぴったりくっつくと、肌を刺すような空っ風から守られる。腰に腕を巻き付け、敬斗の制服のセーターの裾をひっぱって両手を潜り込ませると更に温かい。
 こんな時間もあと少しだと思うと、巻き付けた両腕に自然と力が入る。

「苦しい……死ぬ」

 敬斗がケラケラと笑った。


 私立専願の琴梨は受験が終わり、皆より一足先にピリピリムードから解放された。
 後は卒業式を待つのみだ。

< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop