太陽みたいな君に、恋をした
後ろからそう男の子の声がして、慌てて振り向く。
そこには《藤沢 朱里》と、紛れもなく私の名前が書かれた受験票を持った、綺麗な男の子が心配そうな顔をして立っていた。
キラキラと太陽の光に反射して輝く茶色い髪、二重瞼の黒目がちな瞳に、筋の通った鼻筋。薄い唇。
きっと私と同じ中学三年生なのに、それを感じさせない大人びた雰囲気。
わあ…凄く、綺麗な人…。
「さっき門の所に落ちているの拾ったんだけど、君、何か探し物してたっぽいしもしかしてって思ったんだけど」
違った?と首を傾げるその仕草に、思わず見惚れてしまっていた。
「おーい?」
「あっ…!あの!それ、わ、私のです!拾ってくれて、ありがとうございます…っ」
そうやって目の前で手を振られようやく我に返った私は、慌てて受験票を受け取り頭を下げた。
「よかった。今にも泣きそうな顔してたから心配だった」
そう言って優しく微笑む表情に、思わず高鳴る心臓。
さっきまで地獄に突き落とされたように悲しかったのに、落し物を届けてくれたこの人が神様か何かに見えてきてしまった。
よくよく見てみると、通りすがりにチラチラと彼を横目見る女子が何人かいて、本人は気付いて無さそうだけどこんな綺麗な男の子、そりゃあ見るよねと一人心の中で感心した。
「じゃあ、俺はこれで」
「あっ…ほんとに、ありがとうっ!」
そう言ってまた頭を下げた私に、「どういたしまして」とはにかむ姿に、さっきよりも高鳴る胸をギュッと抑えた。
私の前を通り過ぎ、立ち去った男の子の背中を、私はボーッと見つめることしか出来なかった。
────────── 思い返せばこの時から、名前も何も知らない彼に、一目惚れしてしまったのかもしれない。