婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 だから少し落ち着いて、これからどうするかしっかりと考えて行動しなければと思う。
 ある程度は魔法で何とかなるだろうが、まだ魔法が使えることを自覚したばかり。自分に何ができるのかも、把握していない。
 無理は禁物だ。
(まずは服装と、資金ね。このままでは目立つわ)
 町に行って小さな宝石をいくつか売り払い、服と旅支度を整えなければならない。
(ああ、でも女ひとりじゃ、足もとを見られて買い叩かれそう。不審に思われて、通報されたら面倒だし……)
 一番地味なものとはいえ、ドレスを着て町を歩くのは目立ちすぎる。
 せめてローブでもあればよかったのだが、外出などほとんどしないクロエのクローゼットには室内着しかなかった。
 周囲を見渡しながら目立たない道を歩こうと、誰もいない裏通りに足を踏み入れる。
 ゲームやファンタジー小説から得た前世の知識で考えてみると、こういう大きな町には、大抵どんなものでも買い取ってくれる闇市場があるものだ。
 でも、女ひとりで行けるようなところではなさそうだ。
 いくら王妃が改革を行おうとしても、長年の習慣は容易には変わらない。
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