ヒスイのさがしもの



 声の方へ振り向くと、天井にあたる部分の木々の枝がバラバラと落ちてきた。それに続き、飛び降りたトウマが枝の上に立つ。


「あらあら、お呼びでないお客様ね……」

「その人間は、俺のだ。返してもらう」


 トウマは私の方を指差して、パセリの神様にとんでもないことを言い放った。


「お、俺のってーー」

「ここでは俺のってことにしとく。って、さっき決めた。それとも他の神様のところに行くか?」


 神様にはもう、こりごりだ。食べようとしたり閉じ込めようとしたり。首を横に激しく振る。


「困るわね。人間さんの食事はみんなで食べた方がおいしいって聞いたから、せっかくかわいらしい人間さんを二人も(そろ)えたのに」


 パセリの神様の視線を追うように、トウマは女の子ーー名前は紅、というらしいその子を見る。それから、小さなため息をついた。


「ヒスイ、お前……待ってろって言ったのに。また余計なことに首を突っ込んだな?」

「そんなつもりじゃ……」

「ハイハイ。とにかく行くぞ」


 トウマは、出ていくぞと言うように天井の穴を指差す。しかし私は、すぐにそれに従うことはできなかった。


「待って、私じゃなくてあの子を連れてって」


< 24 / 53 >

この作品をシェア

pagetop