ヒスイのさがしもの



「ーーやっ、やめてあげてください!」

「この子はね、少々お口が悪いみたい。それに、わたくしの料理も食べてくれないのよ。そんな口ならふさいでおいても問題ないでしょう」


 懇願(こんがん)するも、パセリの神様は聞く耳をもたない。


「そういえば人間さん、この子の名前は(べに)というらしいわよ。美しい響きよね。口の悪さがもったいないわ。あなたのお名前はなんて(おっしゃ)るの?」

「わ、私は……」


 ……どうしよう。パセリの神様がおしゃべりをしてくれているうちに私が時間を(かせ)げば、あの女の子くらいは逃げられるだろうか。

 しかしよく見ると、女の子の足にもツタが絡みついている。あれでは自力で逃げられそうにない。


「どうなさったの? 名前を訊いているのよ」

「え、えーとーー」


 どうしよう、どうしよう。どうしたら、あの女の子はパセリの神様から逃げられるだろう。私はーー一緒に逃げられたとしても、よもつへぐいのせいで帰れない。だったら、どうするべきだろう。最適解(さいてきかい)を探す脳みそがぐるぐるして、言葉が出てこない。

 パセリの神様が不機嫌そうに顔をしかめたとき、私の沈黙を切り()くような声が響いた。


「ヒスイ!」

「とっ、トウマ!?」


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