ヒスイのさがしもの




 目覚めると、トウマが私の顔を覗き込んでいた。


「う、わぁ!」

「なんだ、うるさいな」

「な、なにしてるの……?」

「何って、……なんでもないが」


 ぶっきらぼうに言うトウマの手には、ハンカチが握られている。近くに置かれた眼鏡をかけたとき、自分の頬が濡れているのに気がついた。

 ……私、眠りながら泣いてた? もしかしてトウマ、涙を拭いてくれてたのかな。


「……ありがとう、トウマ」

「は? 何もしてないって」


 相変わらず、素直じゃない。

 そういえばいつの間にかウツギさんはいなくなっている。……トウマ、用事は終わったのかな。だとしたら早く紅ちゃんのところに行ってあげたい。


「もう紅ちゃんのところ、行ける?」

「いや、まだだ。ひとつ、出かける用がある。すぐに帰るから待っていろ」


 私が止める間もなく、トウマは外へ出ていってしまった。

 ひとり残されても、やることがない。とりあえず干していた靴下と上履きを履き直して、うろの中を見回す。

 灯りはないが、外から差し込む光のおかげで中は明るい。学校の教室くらいの広さの空間の一角に、ごちゃごちゃと乱雑に小物が置いてあるのに気がついた。

 ……もしかして、トウマが集めている呪いの根源とやらなのかな。


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