ヒスイのさがしもの



 本当に気になるのは、私が何かを忘れていて、それは何かにそうされているということ。けれどそれを直球でトウマに訊くのは怖かった。


「どういう意味だ? 現世に呪いの根源があるというのは少し前から聞いていて、それがヘアピンだと知ったのはおまえに会ったときからだが」

「そ、そうなんだ……あの、あそこにある消しゴムに、描いてあったから」

「消しゴム? ああ、悪いがあそこにある物のことは俺もわからない」

「でも、トウマの物なんだよね……? ウツギさんから、そう聞いたの」

「確かにそうだが……あれは俺が人間だった(・・・・・)ときに持っていた物だ。俺はそのときの記憶がない」


 ーー衝撃だった。トウマがあまりにもさらっと言うのにも驚いた。トウマは元々人間で、しかもその頃の記憶を失っているなんて。

 なんて言ったらいいかわからず、私が小さく口をぱくぱくさせていると、見かねたのかトウマがまた口を開いた。


「……聞いただろう、俺が真神の愛し子だと。俺は幼い頃に死にかけて、真神という神様に助けてもらったんだ」

「……そう、だったんだ……」


 確かに、パセリの神様が呼んでいた。トウマを、真神の愛し子だと。そして、神でも人でもない、とも言っていた。あれは、そういうことだったんだ。


「……でも、素敵だね」


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