王子がお家に住み着いた!
「お人形は卒業したからね、部屋くらいあるさ」

失言かと焦ったが、気にした様子のないルイスはにこやかに答えをくれて。


「ーーーねぇ、エメ。私と正式に婚約してくれるかな」


いつもの微笑みではなく、どこか切羽詰まったような余裕のない表情でそう乞われ、一気に頬に熱が集まるのを感じた。


「はい。もちろんです」


叶わないと思い込んでいた私の気持ちを丁寧に掬い上げ、選んでくれた事実が嬉しくて仕方ない。


初めて出会った5歳のあの日。
あの日から“私のお人形”になってくれた彼の、唯一として求められたその事実にじわりと涙が零れそうになる。

そんな涙をそっと舌で掬ったルイスは、優しく触れるだけの口付けもくれた。


なんだか離れがたくてそのまま彼の胸に体を委ねる。

“ずっとこうしていられたらーー···”

なんて甘い夢が頭を過り、そしてゆっくり体を離した。
< 18 / 21 >

この作品をシェア

pagetop