王子がお家に住み着いた!

2.セーフティゾーンとは全てにおいてのセーフティではない

望みが無さすぎる。
その返事を聞いたリリーはもうその話には触れなかった。

いつかする私の結婚は政略結婚。
我が家門がルイーズ殿下側についていないから、というようにリリーは思ったのだろう。

もちろん望みがない理由は、添い寝以上の関係にミクロもならないからだ。
むしろ娘の私室に住まわせているくらいなので、家としてもルイーズ殿下との婚姻は望ましいとすら思っているはずだが。

「跡継ぎが作れないのは···致命的···」
その結論に深いため息を吐いた。

未成年を主張している殿下はもちろん健全な青年な訳で、それを毎晩腕枕付きの添い寝、それでも安らかに朝を迎えられるということは私の事を全く、まっっったくそういう対象に見れないからという理由なのではないだろうか。

そしてその事実を毎夜突き付けられていてアピールなんて出来る訳もなく···


「さっきは危険な夜、なんて言ったけどさ」
「?」
「気晴らしがてら、身分なんて忘れて遊びに行ってみない?私もずっと側についているから!」
「リリー···」

仮面舞踏会、かぁ···。

どうせ望みがないのなら、確かに気晴らしは悪くないかも、と考える。
それに何より、リリーのその気遣いが嬉しくて。

「そうね、行ってみようかしら?」
「そうこなくっちゃ!」
「で、でも私そういうとこ行くの初めてなんだから絶対側にいてよね!」
「もちろんよ、うっかり公女様が連れ込まれて···なんてスキャンダルには私が絶対させないわ!」

力強く笑うリリーの笑顔に釣られて私からも笑いが溢れた。
サバサバとした少し男らしい彼女は、本当に本当に私の大切な友人だ。
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