いらっしゃいませ幽霊さん
 なんだ…先に言ってくれればもうちょっと寝れたのに。口を尖らせながら椅子に座り、美味しそうな朝食を前に、手を合わせた。

「いただきます」

 見るからにふわふわで美味しそうな卵焼きを箸でつまむ。口に入れた瞬間に優しい味とだしの香りが広がった。さすがだ。初季は何1つ手を抜かずに料理を作る。本当に何回も何回も練習を重ねたんだなぁ。

「ふっ…相変わらず幸せそうに食べるな」
「だって美味しすぎるんだもんこれ!」
「そっか、よかった」

 こんなに美味しい料理が作れるのに、どうして初季は料理人にならずにこの森へ逃げて来たんだろう。気になるけど、なんだか聞いてはいけない気がした。初季だって私のことについて触れないでいてくれてるんだ。私も彼の口から言ってくれるまで待とう。
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