前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
 腕を掴んだまま、挑むように告げたルティアをテオバルトはどこか面白そうに見ている。

「もう少し、とはどれくらいだろうか」
「それは……半年くらい、でしょうか」

 はぁ、とテオバルトはため息をつく。

「ルティア。悪いが俺はこう見えて短気で、思い立ったら即行動という性分でな。あなたの頼みでも、そう長い時間待つことができるかわからない」
「で、ではひと月、いえ、二週間で構いません! それまで国王夫妻に告げることは待ってください!」

 お願いします、と必死の形相で頼むルティアをテオバルトは無感情で見下ろしている。これはもはやだめか、と諦めかけた頃、彼は不意ににこっと笑った。

「わかった。あなたがそこまで頼むならば、もう少しだけ、待ってみよう」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。だが――」

 なぜだろう。彼の笑顔がすごく極悪人が浮かべるようなあくどい笑みに見えるのは。

「その間気が変わるかもしれないからな。ちょくちょく様子を見に王宮へ足を運んでくれると助かる。できれば毎日がいいな」

 いいだろうか? と言われ、ルティアは「あれ、おかしくない?」と一瞬思ったが、ここで断るわけにもいかず頷いていた。

「わかりました。その代わり、わたしとの約束はきちんとお守りくださいね」
「もちろんだ」

 こうしてテオバルトと別れは先延ばしにされたのだった。

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