前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
 離宮の前には衛兵たちがいた。女王を監視するため……というよりも、彼女に捧げられた生贄が逃げ出さないようにするためだろう。

 中へ入ろうとするカイを彼らは呼びとめる。だがカイは構わず血の臭いが充満する処刑場へと突き進んでいく。中は薄暗く、地獄へ続く道のように点々と蝋燭が灯されている。彼はその火で絨毯やカーテン、家具を次々と燃やしていく。

 小さくて消えそうな火が大きな炎へ変わり、何もかも呑み込んでいく光景はアリーセの怒りに思えた。すべて、何もかも、燃え尽くしてしまえばいい。

「火事だ!」

 すれ違う者たちは奴隷の存在など目もくれず、火を消すこともせず我先にと逃げていく。

 流れに逆らい、一人カイは奥の間へと向かう。女王アリーセがいる場所に。

 空まで届くほどの高い天井、教会を思わせる大きな部屋の奥、血だまりの中に彼女はいた。

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