前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ

33、目覚め

 熱い。全身燃えるようだ。

 でも、この痛みに耐えるのは独りではなかった。ずっと、一緒にいてくれた人がいる。

 アリーセは――ルティアはそう思うことで、心が救われる。今までずっと感じていた痛みが和らぎ、息苦しさが癒されていく。熱い炎は消えて、代わりに冷たい水が自分を包み込む。そんなはずないと思いながら、ルティアは薄っすらと目を開けた。

「ルティア……」

 自分の身体がひどく濡れていることに気づく。上からぽたぽたと零れ落ちてくるのは水滴であり、涙だった。全身を水に濡らしたカイが――テオバルトがルティアを腕の中に抱え見下ろしていた。彼は泣いていた。目を覚ましたルティアの姿に、顔をくしゃりと歪め、さらに大粒の涙を零していく。

「テオバルト、さま……」

 消え入りそうな小さな声だったが、テオバルトにはきちんと聴こえており、さらに抱き寄せられた。間に合ってよかった、と絞り出すような声で吐露される。

「あなたは俺を置いていくつもりだったのか」

 ふるふると首を振る。彼の背中にどうにか腕を回し、必死にしがみつく。離れたくないと懸命に伝える。

 そんなルティアの意思表示にテオバルトはくすりと微笑み、先ほどより強く抱きしめ返す。ルティアの気持ちに応えるように。わかっていると告げるように。

「そうだな。置いていかれたら、追いかければいいだけだな」

 そういう意味では……と顔を上げたルティアはテオバルトの笑みに何も言えなくなる。

「ルティア……」

 愛おしげに自分を呼ぶ声。ルティアは目を閉じて、愛する人の口づけを受け入れた。

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