身代わり婚約者との愛され結婚
「ならば、本人の資質を指摘して婚約破棄を申し込まれるのはいかがでしょう」

 今まで黙っていたジョバルサンがそう口にするが、私は再び首を振る。
 

 この借金を払おうと思えばいつでも払える侯爵家。
 だからこそこれを理由に婚約破棄なんてもちろん出来ない。

 払ってしまえばなくなるからだ。
 

“それどころか野心家の侯爵だもの”

 デビュタントの日、ベネディクトを売り込みに来たニークヴィスト侯爵のことを思い出す。

 彼は的確に私の望みを理解し『商品』として紹介した。
 そしてそれは正に私の理想で……、だからこそベネディクトとの婚約を決めた。

 
 そこまで調べて売り込んだのだ。
 ベネディクトがダメならときっと彼の兄を代わりとして出してくるだろう。

「理由なんていくらでも作れるわ。弟の責任を取る為に、と言われれば何も言えないもの」

 何故ならこの結婚は、条件を優先した政略的なものだから。
 

“むしろベネディクトと破棄し野心のある兄を送り込むのが最初から目的で、ベネディクトを今まで放置してきた……なんて可能性もあるわね”

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