身代わり婚約者との愛され結婚
『可愛い私たちのティナ、父さんは愛する母さんのエスコート以外しないよ?』

 ……なんて、あっさりと断られた後だった。


「一応エスコート了承の連絡はベネディクトから来てるのよね」

 誘わない訳にもいかず、エスコートも必要だったために送った招待状。
 参加する旨が書かれていた手紙を手に取った私は、再び開けることなくポイと机に投げる。

“この手紙は誰に代筆させたのかしら”

 形式上やり取りをしている手紙は毎回違う筆跡。
 今回のこそ本人かもしれないし、今回も彼の身代わりの誰かが書いたのかもしれない。

 ――……というか、それより。


「どっちが来るのかしら?」


 さすがにこの特別なパーティーはベネディクト本人が来る……と信じたいが、この四年間全てのお茶会に代理を送った張本人でもある。

 この拭えない一抹の不安に頭を抱えそうになっていた時、私の部屋の扉がノックされた。
 

 「アルベルティーナお嬢様、代理……かもしれないお客様がお見えです」
「代理“かも”しれない?」

 その歯切れの悪い言い回しに、両親との食事の為のドレスを選んでくれていたハンナと顔を見合せ首を傾げる。
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