身代わり婚約者との愛され結婚

21.嵐の前の後始末

 ベネディクトに宿屋へ連れ込まれた翌日、私は今までベネディクトにされた……というより、して貰えなかったことを全て両親に打ち明けた。

 一度も茶会に顔を出さないこと、手紙すら別人が書いていること、彼が借金をして結婚時期を早めたがっていること。

 流石に無理やり宿屋へ連れ込まれ下着を脱がされた挙句純潔を散らされかけたことは言えなかったが――それでも十分に怒ってくれた両親は、私の婚約破棄へ賛同してくれた。


『何度も言っていたでしょう、私たちの可愛いティナにはちゃんと想い合える人と幸せになって貰いたいの』

 
 そう言って抱き締めてくれた母の腕の中で少しだけ泣いた私は、後始末は自分でするからと訪問したい旨を記した手紙をニークヴィスト侯爵と婚約者であるベネディクト宛に送って――もう10日。


「全ッ然返事が来ないわ……!」
 

 この国で婚約を破棄することはあまり難しくなく、神殿に提出していた婚約証明を取り消す手続きだけで良かった。

 他国のように陛下のサインがいるだの、婚約破棄しなくてはならないほどの理由とそれを証明する証拠が必要な訳でもなく、ただ事務的に処理するだけ。
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