身代わり婚約者との愛され結婚
 それでも、私は交渉に来たのだ。
 この程度で揺さぶられてはまずいと顔を上げる。


「ベネディクトがいなくて申し訳ないね、あの子には今謹慎させているんだ」
「謹慎ですか?」
「あぁ、そして改めてアルベルティーナ嬢に謝罪をしよう」

 謝罪、という単語にドキリとする。

 謝罪すると口にしたのは侯爵なのに、まるで観察するようにじっとりとした視線を向けられた私はじわりと背中に汗をかいた。

 侯爵の視線が私のネックレスで止まったことに気付いた私は、思わずぎゅっとネックレスについた濃紺の石を握り締めてしまう。


“何を、言われるのかしら……?”
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