身代わり婚約者との愛され結婚

22.薄っぺらい紙と、薄っぺらい四年間

 侯爵が視線を止めたのは濃紺の……レヴィンの髪色と同じ宝石。
 そして何より『謝罪』する気なんてなさそうなのに口にしたその謝罪の意味にゾクリとする。


“知ってるんだわ……!”

 ベネディクトに連れ込まれたこと。
 そしてそこからレヴィンと二人で出てきたことを。


“何もやましいことなんてないけれど”

 そんなの、主張次第でいくらでも覆されてしまうだろう。


 家への損害を気にしてさっさと婚約破棄を申し出なかったことを今更になって後悔する。
 こうなれば、慰謝料なんてレベルではないほどのものを要求されるかもしれない、そう覚悟した、私だったのだが。


「君の言いたいことはわかっているよ、ベネディクトとの婚約破棄だろう?」

 わざとらしくふぅ、と息を吐いた侯爵は、まるでこの瞬間を待っていたというようにニヤリと口角を上げて――……



「その婚約破棄、賛同しよう」
「…………、え?」


 同意を得るのが最も難しいと考え、そしてどれほどの損害をエングフェルト公爵家へ与えることになるのかと覚悟してここまで来た私に告げられたその一言に唖然とする。

“賛同……する?”
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