身代わり婚約者との愛され結婚
 きっと今私がすべきことは、レヴィンの心配ではなくレヴィンを信じ、そして自分のすべきことを成すことだろう。

 
 こっそり心の中では彼を恋しく思いつつも、表には出さないように気をつけながらレヴィンから連絡が来ないことを忘れるように仕事へ取り組む。

 自分でも少し根を詰めすぎているかな、と思っていたそんな時だった。


「ティナ、いるかな」
「お父様?」


 私専用の執務室の扉をノックしたのは、現公爵である父だった。


「今度愛しき妻と新作オペラを観に行く約束をしていてね。折角だから一緒にどうだい? 私たちの愛しき娘よ」

 わざとらしいくらいの言い回しで、少しオーバーな手振りも加えてそんな事を口にする父に思わず笑ってしまう。


“私が塞ぎ込んでいたこと、気付いていたのね”

 何もしていないと、レヴィンから連絡の来ないことにどんどん落ち込みそうな気がしていた私は、それらの考えを振り払うように仕事へ没頭する毎日を過ごしていた。

 きっとそんな私を心配してくれたのだろう。


“いつもは二人で観に行くくせに”
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