身代わり婚約者との愛され結婚

23.嫌な予感の、正体は

「連絡、来ないわね」

 はぁ、と私から思わずため息が漏れる。
 
 つい視線が向かうのは、レヴィンがくれた花たちでいつも彩られていた花瓶たち。

“もう全て枯れてしまったわ”

 空っぽになってしまった花瓶を見ると、まるで私の心までもが空っぽになってしまったかのような気がしてしまう。
 
 今手元に残っているのはサギソウのしおり一枚だけ。

 
『夢でもあなたを想う』という花言葉を持ったサギソウのしおりを、私はぎゅっと胸に抱き締めて。
 
「夢の中なら、会いに来てくれる?」

 ポツリと呟き、そしてそんな弱気な自分を追い払うように頭を左右に振った。
 

 スペアとして教育を受けていた次男のレヴィン。
 私と本当に結婚するつもりならば、スペアの問題を解決しなくてはならない。

 
“本物の婚約者になりたいとレヴィンは言ってくれた”

 そして私も待ってると約束したから。

「今は目の前の仕事に集中しなくちゃ」

 いつか彼の婚約者だと胸を張れる日が来るように、私は次期公爵として任されている仕事へと手を伸ばした。


  
 優先順位を間違えないで、とレヴィンは繰り返し言っていた。
 
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