身代わり婚約者との愛され結婚

24.犠牲と、ただ待つというだけのその覚悟

「出荷が……止まった……?」

 言われた内容に驚愕する。

「ご存知だとは思いますが、クラウリー領から王都へ花を出荷しようと思うとニークヴィスト領を通らねばならないのです」
「えぇ、そこを通らない道を選べば立地の関係上何倍もの時間がかかるのよね」

 生花の寿命は短い。
 だからこそベネディクトの領地を通らなくてはならないのだと、だから彼に弱いのだとそうレヴィンが言っていたことを思い出す。

「何でも、通行料が以前の三倍にも上がってしまったらしくて」
「三倍ですって!? そんな理不尽なこと許されるわけないわ!」

 ギョッとして思わず店主に詰め寄ると、そんな私に驚きつつ店主がコクコクと頷いた。

「で、ですが、何故かその条件を出したのはクラウリー家の方らしいのです」
「クラウリー伯爵側からの申し出……?」

“そんな馬鹿な!”

 あり得ない、とその話を一掃しようとし、ふとニークヴィスト侯爵のニヤリとしたあの不気味な笑顔が頭を過る。


「まさか……」


 ベネディクトとの婚約破棄を申し入れに行った時のあの嫌な予感の正体が、もしこの未来を示唆したものだったのだとしたら。

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