身代わり婚約者との愛され結婚
「エスコートは、父がしようか」
「お父様が?」

 暗い表情をしていたからだろうか。
 いつもは母を優先する父から、はじめてそんな提案をされた私は思わずポカンと口を開けて。


「らしくありませんわ。お父様にはお母様がいらっしゃるでしょう」
「それはそうなんだけれどね、だが――」
「……必要、ありません」


“一人で夜会に参戦して嘲笑われるくらいどうってことないわ”

 だって、レヴィンもきっと戦っているから。


「私にも、お父様たちのように心に決めた人が出来たのです」 
 
 エスコートをして貰えなくても、一人で夜会に参戦し惨めだと笑われることになってもいい。

 私は待つと約束したから。

 決意した私の顔を見たからか、父は「そうか」と一言だけ。
 寂しそうに、けれどどこか嬉しそうに笑ってくれた。
 


 出席する旨の返事を出してから一ヶ月。
 今日はとうとうクラウリー伯爵家が飾り付けを担当したという夜会当日。
 

「本当にエスコートはいらないのかい?」

 一人で夜会に出ようとしている私を心配そうに見るのは父だった。


「らしくないことを」
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