身代わり婚約者との愛され結婚

27.幻想世界に魅入られて

「今回、クラウリー家が飾り付けを担当することになったのはニークヴィスト侯爵家からの進言だ」
「え……?」
「もちろん、前回の飾り付けが好評だったという理由で、それに宰相殿も賛同されたからだが」
「建前、よね」

 少し歯切れの悪い言い方の父に、私の声も暗くなる。
 そんな私に気付いた父は、少し眉を下げて私の顔を覗き込んできて。


「ウチから援助を申し込もうか?」


 告げられた言葉にビクッと肩が跳ねた。

“レヴィンのこと、気付いていたのね”


 父からのその言葉は、まるで甘味のように私を誘うようで――頷きたい気持ちを必死に抑え、私はゆっくり首を左右に振った。


“優先順位は、間違えないわ”

 だってそれがレヴィンとの約束だから。


「いいえ。今ここで公爵家がクラウリー伯爵家へ援助をすれば、そこをニークヴィスト侯爵家がどう捉えるかわかりません」

 無茶苦茶な言いがかりをつけられるかもしれない。

 そして言いがかりをつけることこそが狡猾なニークヴィスト侯爵の狙いかもしれないのだ。

“結局どこまでいっても見守るしか出来ないのね”

 余りにも無力な自分が嫌になる。

< 199 / 269 >

この作品をシェア

pagetop