身代わり婚約者との愛され結婚
 なんだか誤魔化されたように思わずムッとしていると、赤い顔をしたレヴィンがぎゅっと抱き締めてきて。


「ずっと我慢していたんです。貴女を帰せなくなる」
「っ」
「だから、今日はここまでです」

 囁かれたその言葉に心臓が跳ねる。
 レヴィンからもドクドクと跳ねる鼓動が触れた胸から伝わり、私の鼓動と混じるようで。


「もう、待たないからね」
「はい」
「早く来てね?」
「もちろんです」


 お互い気恥ずかしく、けれど彼を見つめていたい。
 再び絡んだ視線をそのまま繋げるように、ちゅ、と唇を重ねた私たちはやっと馬車から降りたのだった。



 予定より早く戻ったからか、それともクラウリー家の馬車で戻ってきたからか出迎えに待機してくれていたジョバルサンと、そして慌てて走ってきてくれたハンナの驚いた顔に笑ってしまう。

“前にも同じことがあったわね”


 あの時はベネディクトに無理やりされそうになり、心身共に傷付いていた。
 今回も、またベネディクトのせいで足は怪我しているしドレスも破れてしまっているけれど。


「ただいま」
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