身代わり婚約者との愛され結婚
 内心で、だが思わず丁寧な言葉遣いを忘れ驚く私。
 チラッと見たハンナと案内を担当したメイドも驚愕の色を隠せていないので、全員正直来ない可能性を考えていたのだろう。


「もうパーティー始まるな、さっさと行こうぜ」
「あ、はい」

 私のドレス姿の、特に胸元を見ていたベネディクトがくるりと背を向けたので慌てて立ち上がった私は小走りで彼の隣に向かう。

“ハンナが頑張ってくれたのだけれど……”

 褒め言葉どころかギリギリにしか来なかったことに対する謝罪、というかそもそもこの四年間代理を送り続けていたことに対する謝罪すらもない彼に私は少しだけ呆れた。

 嫌みくらい言ってやろうかしら、なんて頭を過るが、元から私たちのこの婚約にも、そして結婚後の生活にも愛なんてないのだととっくに割り切ってしまっていた私は全ての言葉を飲み込んで。


「……成人祝いのお花、ありがとうございました」

“持ってきてくれたのも、選んでくれたのもレヴィン様ですけれど”

 それでもお花が嬉しかったのは事実だから、と思いお礼の言葉を口にしたのだった。
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