身代わり婚約者との愛され結婚

6.ギャップというのはいつもずるい

「流石にそれは……」

“ダメだったかしら”

 特に深い理由などはないが、それでもなんとなく彼に呼んで欲しいと思った愛称。

 戸惑った表情を向けられるが、何故だか諦めきれずにレヴィン様をじっと見ていると。


「……では、俺のこともレヴィンと」
「え、でも」

 年齢は彼の方が二歳上。
 確かに家格としては公爵家である私の方が上だが、それでも年上の男性をいきなり呼び捨てにすることに戸惑いを覚えた私だったのだが。

 
「俺たちは婚約者同士ですから、ね? ティナ」

 さっきまでの戸惑いをどこか悪戯っぽい笑顔に塗り替えたレヴィン様が、くすりと笑みを溢しながら人差し指を自身の唇に当ててそう口にする。

 その所作がなんだか艶めいて見え、私の胸がドクンと高鳴った。

“その表情はズルくないかしら”

 私だけがドキドキさせられているようで少し悔しく思いつつ、それでも呼ばれた愛称が何故だかとても嬉しくて。


「……わかりましたわ、レヴィン」

 ふふ、とお互い顔を見合わせて笑ってしまう。
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