身代わり婚約者との愛され結婚
 少しむず痒いようなこの心地よさが嬉しくて、エスコートの為に差し出してくれた腕に私もぎゅっと腕を絡めたのだった。

 

「ねぇ! あれは何かしら」
「あれは綿菓子と言って甘いお菓子ですね」
「綿菓子」

 ふわふわの、まるで雲のようなものが並べられた屋台を指差しながら聞くとすぐに返事をくれたレヴィンが店主に銅貨を渡す。

「ま、待って! 今日は私がお礼をする日で……っ」

 ハッとし慌てて私がそう口にすると、銅貨と交換で手渡されたそのお菓子を差し出されて。
 
「なら尚更こちらをどうぞ」
「で、でも」
「お礼なら、ティナの喜んだ顔が見たいです」
「……っ」

 受け取るべきか咄嗟に迷った私だったのだが、そこまで言われれば受け取るしかない。

「わ、かりましたわ。ありがとうございます」

 レヴィンから受け取ったお菓子を早速食べようと思った私だった、の、だが。

 
“これ、どうやって食べるものなのかしら”

 持ち手だろう木の棒を受け取ったまでは良かったのだが、目の前で軽く揺れるその綿雲のような部分は私の顔より少し大きい。
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