身代わり婚約者との愛され結婚
 

「――ッ、あ、ありがとう、ございます」

 受け取ったカフスボタンの入った小さな包みを表情を隠すように顔の前に出したレヴィン。
 けれどもそんな小さな包みでは隠れるはずもなく、文字通り真っ赤に染まった彼がいて。


「――すみません、その、嬉しい……のですが、少しだけ向こうを向いていてくれませんか」
「はっ、はいっ!」

 釣られて真っ赤になっただろう私も、その顔を隠すように慌ててレヴィンに背を向けた。


“大成功……で、いいのよね?”

 バクバクと痛いくらいに跳ねる胸に戸惑いつつ、喜んでくれたことにホッと胸を撫で下ろす。

 いつまで違う方を見てたらいいのかしら、なんて迷いながらふと顔を上げた私は、その先のある光景にギシリと体を強張らせた。


「――レヴィン、そういえば今日はベネディクト様の欠席理由を聞いてませんでしたね」
「あ、え? えっとベネディクトは、今回も仕事で手が離せず……」
「そうですか。それで、ベネディクト様の仕事とは」


 さっきまでぽかぽかと温かかった胸が急速に冷えるのを感じる。

「……あぁやって、知らない令嬢の腰を抱きながらデートをすることなのかしら」
 
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