身代わり婚約者との愛され結婚

7.これでお互い様ってやつなのです

 私の質問を聞いたレヴィンも、どうやら私の視線の先の光景に気がついたようで。

「なるほど、レヴィンはあれがベネディクト様のお仕事だと?」
「そ、れは……」

 歯切れの悪いレヴィンに、私の胸はどんどん冷える。

“どうせこんなことだろうとは思っていたけれど”

 婚約者との茶会に四年もの間一度も参加できないなんて、どんなに仕事が忙しいとしても普通はあり得ない。

 政略的な結婚だから、こんなものだろうと割り切ってもいた。

 ……けれど。

 
“どうしてかしら、レヴィンも知っていたってことが何故か無性に腹立たしいわ”

 レヴィンはベネディクトの友人であり身代わりなのだ。

 当然彼も全てではなくても知っていたはず。

“家の事情で反論や拒否が出来なかったってわかってる、わかっているけれど”

 それでも、レヴィンに嘘を吐かれたような気分になりどうしようもなく苛立って。


「……エスコートに回した手で臀部を揉む必要はあるのかしら?」
「ない、ですね……」
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