アンハッピー・ウエディング〜前編〜
雛堂おすすめの映画のタイトルは、その名も。

「…何これ?」

「『オシイレノタタリ』。世代を超えて愛される、超有名映画だぜ」

パッケージは、真っ暗な押し入れからゾンビの手のようなものが手招きしている。

このパッケージだけで怖い。

これ夜中に見たら、絶対腰を抜かすぞ。

…ドヤ顔でおすすめしてくれるところ、悪いんだけど。

「これってホラー映画だよな?」

このタイトルとこのパッケージで、愉快なコメディ映画だったら、とんだタイトル詐欺だぞ。

しかし、さすがにそんなことはなく。

「勿論。ホラー映画だよ」

だよな?

…ホラーね、ホラー映画…。

「…悪いけど、これはやめとくよ」
 
「えっ、何で?…あっ、成程分かった分かった。ごめん、自分が悪かったよ」

映画初心者に、いきなり勧めるか?ホラー映画。

もっとこう、万人受けしそうな映画を…。

「それ、R15だからな。妹ちゃんが一緒に観れないから、それで駄目なんだな?」

は?何その誤解。

「それなら…うん、これだな。こっちだったら全年齢だ」

そう言って、雛堂が差し出してきた二本目のおすすめ映画のタイトルは。

その名も、『冷蔵庫の中』。

…このタイトルで、どんな映画なのは推測するのは非常に難しいだろう。

え、コメディ?まさか恋愛映画じゃないよな?

でも、この映画がどんな作品なのかは、パッケージを見れば分かる。

半開きになった冷蔵庫の中から、歪に歪んだ腕が突き出している。

どう見ても、ホラー映画。

…押し入れは、まぁ百歩譲って分かるけど。

「最近の幽霊って、押し入れや冷蔵庫に潜んでるんですね」

乙無が、俺の思っていたことを代弁してくれた。

この幽霊が冷蔵庫の中に潜むようになった、その動機が知りてぇよ。

冷蔵庫の中に閉じ込められて死んだとか…?そういうこと?

「おいおい、馬鹿にしてもらっちゃ困るぜ」

と、雛堂が言い返した。

「このシリーズ、めっちゃ怖くて面白くて、ホラー映画業界の中ではレジェンド的扱いなんだぞ」

冷蔵庫の中がレジェンド…?

「他にも階段に潜んでたり、屋根裏にいたり…。あっ、ほら、見ろよ」

何を?

雛堂は、ホラー映画新着おすすめコーナーに並んでいたDVDを指差した。

「やべっ、新作じゃん!これずっと気になってたんだよ」

どうやら、掘り出し物を見つけたらしい。
 
雛堂が飛びついた、新作ホラー映画のタイトルは。

その名も、『イン・ザ・電子レンジ』。

…最近の幽霊って、電子レンジに潜むのか?

全く、一ミリもホラーな要素が見当たらない…どころか、コメディ映画と錯覚してしまいそうなんだけど。

それ、本当にホラー映画だよな?
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