アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「えーっと、えーっと。ビッグハムスターに乗って、それからスペースハムスターに…。それにポップコーンを食べて、ピザも食べたいの」

初めてのハムスターランドに、大興奮の寿々花さん。

やりたいこと、食べたいもの、行きたいところを次々に並べ立てる。

分かった、分かった。

「分かったから、ちょっと落ち着け。な?」

「早く行かないと、ハムスターが逃げちゃうよ」

「…大丈夫だって」

ハムスターは逃げない。心配しなくても。

「それに、悠理君が乗りたいって言ってた、ハムスターさんのひまわりのタネハントにも乗りたいんだ」

…俺、乗りたいって言ったっけ?

まぁ良いけど。

「近いところから、順番に回ろうぜ。ほら、園内マップ見ながら」

ガイドブック買ってきておいて、本当に良かった。

広い園内で、何処のエリアの何処に目当てのアトラクションがあるのか、丁寧に記載されている。

優れものだぞ、このガイドブック。

これがなかったら、園内で迷子になるところだった。

「幸い、優待パスで街ち時間はかなり短縮されてるからな。多分、寿々花さんの行きたいところは全部回れるよ」

「本当?やったー」

待ち時間なしっていうのは、強みだよな。

見てみろよ。開園してまだ10分ほどしか経ってないのに。

人気アトラクションの前には、行列が出来始めている。

行列のお客さんをスルーして、優待チケットを掲げて「これが目に入らぬか」が出来るんだもんな。

金の力は凄い。

椿姫お嬢さんに感謝。

…と思ったけど、律儀に並んでる人を横目に、金の力で順番抜かしをするのは…ちょっと申し訳ないけどな。

「えぇっと…。まずはどれに乗りたい?」

「ビッグハムスターが良い」

好きだな、それ。

ずっと言ってたもんな。ビッグハムスター・マウンテンだっけ。

マップを見たところ…。ハムスタンランド・エリアにあるらしい。

入り口からは若干遠いが…本人が乗りたいって言うんだから、歩くか。

しかし冷静に考えて、ビッグハムスター・マウンテンって…。デカいハムスターの山?って意味だよな?

何なんだよ。デカいハムスターの山って…。

考えたら負けだな。考えまい。

このとき、俺は失念していた。

寿々花さんが乗りたがってるビッグハムスター・マウンテンというアトラクションは。

このハムスターランドで、所謂三大マウンテンと呼ばれる絶叫系アトラクションであるということを。
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