「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~
「アイ様、あなたを行かせるわけにはいきません」
「そうですよ。ほとんど状況がわからないのに、なにかあったらどうするのです?」
「アイ様、隣の領地に行くわけではないのです。隣国ですよ。やはり、情報がなさすぎます」
「将軍閣下も反対されますよ」

 医師や看護師、お手伝いの人たちまで口を揃えて行ってはいけない、と言う。

 焦燥に苛まれた。こうしている間でも、流行り病にかかった人たちは苦しんでいる。その家族や知人や町や村の人たちは伝染する恐怖に怯え、不安で眠れない日々をすごしているはず。

 ここで行く行かないの議論をしても、いたずらに時間だけがすぎていく。

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