黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
ウィル様の気持ちが伝わってくる。
でも私は応えることができないの。
こんなにも優しいあなたのその想いに。
だけど私の胸はどうしてこんなにも甘い痛みに覆われるのだろう。

桜の花びらがハラハラと舞い落ちる。

「ウィル様…」

私はどうしたらいいか分からなくて、涙が出そうになり手を引こうとした。

「……やはりくすぐったいですね。こちらに書いていただけませんか？」

パッと手を離していつものように優しく穏やかに微笑みながら、スッと上着の内ポケットからペンとメモ用紙を出した。

「……え！？ 持っていたなら教えてよ！」

「フフフ。申し訳ございません」

「もう！そうやっていつもからかうんだから！って…あ、ごめんなさい！」

ウィル様の言動に焦ると敬語が抜けちゃう！

「いえ、そのままでお願いします。素のあなたの可愛い話し方で」

私の話し方ひとつでまた嬉しそうに微笑む。

「実桜…」

「え…」

「あなたに似合う名前ですね」

私の黒髪についた桜の花びらを取り、私を見つめる。
この人はどうしていつもこんな瞳をして私を見つめるのだろう。

「あなたの本当の名前を知っているのは私だけだ。もっと…もっとあなたのことが知りたい…」

人を好きになるとこんなに優しい眼差しで見つめるようになるのだろうか…。
いつか私も…？

桜の花が暖かな風と共に舞い、私達を包み込んだ。
まるで、この世界には私達二人しかいないみたいに…。
私は今まで以上にドキドキと高鳴る胸に戸惑っていた。



少し離れた場所では赤色の髪の令嬢が手を握りしめ、悔しそうに聖女を睨んでいた。

「……お父様のせいよ。こんなことになったのは！本当ならあの方の隣にいるのは私だったのに！」




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