14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 クラゲの和え物を口に入れる。コリコリしたクラゲときゅうりはさっぱりと酢が効いていておいしい。

「月曜日からはその姿で出勤をするのか?」

 その質問がおかしくてクスッと笑う。

「元の姿に戻せませんし、そのつもりです。恥ずかしさがありますが」

「普通にしていればいい」

「はい。そうします」

 スタッフが豚肉の黒酢あんを運んできた。それから次々とエビチリや北京ダッグ、水餃子、チャーハンを食べ、デザートの杏仁豆腐が出たときにはおなかがはち切れそうなほどだった。

 
「ごちそうさまでした。それと、送ってくださりありがとうございました」

 マンション前の道路に車が止められて、運転席に座る大和さんに頭を下げる。

「紬希、明日からまた海外出張なんだ」

「お忙しいですね。日曜日からだなんて。お疲れさまです」

「帰国はおそらく金曜日になる。戻ったら話がある」

「話……ですか?」

 もしかしたら、恋人のフリをしなくても良くなったとか……?

「ああ。連絡するよ」

「……わかりました。お気をつけて帰ってくださいね。おやすみなさい」

 もう一度頭を下げるとドアの取っ手に手を掛ける。

 大和さんも運転席を離れ、車から出た私のところへやって来る。

「おやすみなさい」

「おやすみ」

 マンションのエントランスの前まで来たとき、大和さんの声が背後から降ってくる。

「紬希」
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