14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 そこへ課長が出勤してきて、私たちは軽く挨拶をする。いつもは背後を素通りしていく課長が立ち止まる。

「おはよー、秋葉……さん?」

 椅子から立ち上がり、頭を下げる。

「はい。おはようございます」

「おはよう。いや~驚いたよ」

 それ以上容姿に関して口にすると、セクハラを懸念したのか、それだけ言って課長は自分の席に座った。

 眼鏡を外したときと同様、イメチェンに驚いている社員たちの目に辟易するくらいの一日だった。

 服はいつもと同じものだが、人の第一印象は顔からと聞く。特に着席していると上半身しか見えないので、変わったのがありありとわかるのだろう。

 自意識過剰なのかもしれないが、容姿うんぬん関係ないのに……と、疲れを感じたとき、大和さんの『普通にしていればいい』と言った言葉が思い出される。

 今が物珍しいだけ。明日になったら、みんなは気にしなくなる。

 
 考えていた通り、翌日にはイメチェンの件を口にされなくなって気持ちは軽くなった。

西島(にしじま)部長の名刺、渡してきます」

 四十代後半と聞いている西島部長は大手の航空会社の経理課にいたが、ヘッドハンティングされて一年前に入社している。
 こちらの部署も経理課だ。

 誰ともなしにそう言って席を外し、パーティションで遮られている向こう側の経理課へ行く。
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