14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「あら、そうかしら。肩書は大事よ。私も、……パパに秘書課長にしてもらったの。会社経営者の娘なのにペーペーだなんてみっともないでしょう?」

 関係ないと言っているのだから、肩書を大事にする女は絶対に嫌いなはず。そして実際あやめは秘書課長だ。

 嫌われたいがための発言だが、高飛車に言い放つなんて初めてだからうまく話せているかわからない。

 事実、言葉につっかえてもいる。

 そこへスタッフふたりがシャンパンのボトルと料理を運んできた。

 フルートグラスに金色の液体が注がれる。

 目の前には五種類の彩りよい前菜が、美しいお皿に乗せられて置かれた。

「乾杯しましょう」

 忽那さんはフルートグラスを手にして軽く掲げ、私も同じ行動をする。

 何も言わずにツンとすましてからフルートグラスに口をつけた。

 ひと口飲んで、ノンアルコールなのに本当にアルコールが入っているみたいな極上のシャンパンだった。

「どうぞ召し上がってください」

 正直言って私でもこんな女性と食事なんてしたくないと思うのに、忽那さんは至極丁寧だ。

「いただくわ」

 ナイフとフォークを使って、スミイカのジェノベーゼマリネを食べる。まだ緊張は解かれないので、食べ物が喉を通らないと思ったが、そのおいしさにどんどん胃の中へ入って行く。
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