14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「あらためて、忽那大和です」

 彼は内ポケットからダークグリーンの名刺入れを出して、中から一枚私に差し出す。

 慌てて立ち上がろうとした瞬間、脚を組んでいたこと忘れてもたもたしてしまう。

 名刺を受け取り、お尻を椅子に着けながら、あやめから彼女の名刺をもらっていないことにどう言い訳するか考える。

「プライベートでは名刺を持ち歩かないので、私からはないわ」

「君の身上書はもらっているし必要ないですよ」

 忽那さんは形の良い唇を緩ませる。

 本当にイケメン……。

 彼から視線を持っていた名刺へ落とした直後、心臓が止まるくらい驚愕した。

 光圀商事専務取締役っ!?

 この人は私が働いている会社の専務取締役なの? あやめはわざと教えなかったの?

 知っていたら引き受けなかったもの。

 名刺を二度見してから、心の中で落ち着くように言い聞かせる。

 最上階の重役室と、総務課では乗り込むエレベーターが違うし、今まで会ったことがないのだから、この先社員だと身バレすることはないだろう。

「……若いのに専務取締役なのね? しかも日本でトップクラスの総合商社」

 専務取締役というからには、旧財閥の創業者一族と関りがあるのかもしれない。

 トップクラスの総合商社に、私は新卒並みのテストと面談を二回して転職した。お給料がいいし、この先結婚しなかったとしてもずっと続けられそうな会社を選択したのだ。

「まあ肩書なんて関係ないですよ。会社の業績が上がればいいんです。そのための努力は惜しみません」

 そう言うからには、忽那さんは仕事人間なのかも。

 人柄の良さを感じるが、それに同意したら嫌われない。
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