14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「この眼鏡は伊達だろう?」

「伊達ですけど、必要なものです」

 必要なもの? 伊達眼鏡が?

 気になりすぎるだろう。

「返してください」

 手を差し出す彼女に、笑みを浮かべる。

「美人なのにこれを必要としている背景が気になったな。けど、意地悪はしないでおくよ」

 俺の言葉にあっけに取られている紬希の顔に黒縁眼鏡をかけると、隣の席に座り脚を組んだ。

 紬希の戸惑いがありありとわかる。

「で、君の名前は? 宮崎あやめはどこに? 代理を立てるくらいこの縁談が嫌なんだろうな」

 ギクッとした表情になった彼女は小さな吐息を漏らす。

「……私は秋葉紬希と言います。あやめは親友で……彼女には好きな人がいます。今日はどうしても行かなくてはならない場所があって、直接お会いしてお断りが出来ないので、私が頼まれたんです」

 口調は丁寧で、ドへたくそな演技をさせた宮崎あやめに怒りを覚えたが、すぐに思い直す。

 月曜日に総務課で働く紬希に会いに行こうと思っていたところだったしかし、苦痛だった見合いのランチが思いのほか楽しいものになったのは、宮崎あやめのおかげだ。
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